67.エボラワクチンの臨床試験で100%の防御効果が推定された

ギニアで行われているエボラワクチンの第3相臨床試験の中間成績がLancetのオンライン版(7月31日)に発表された。試験に用いられたのは、エボラウイルス糖タンパク質を発現している牛水疱性口炎ウイルスのベクターワクチンで、カナダ公衆衛生研究所が開発し、NewLink GeneticsとMerckがライセンスを獲得している(本連載49回、突然脚光を浴びたエボラワクチン)。

試験が開始されたのは2015年4月で、その頃にはリベリアでの発生はほぼ終息し、シエラレオネでの発生も急速に減少していたが、ギニアでは毎週数10人の患者が発生していたため、ここでの臨床試験に大きな期待が寄せられていた。

ワクチン接種は天然痘根絶作戦の際に用いられたリングワクチン接種の方式で行われた。これは患者が発生した際に患者との接触者(第1のリング)、さらに接触者に接触した人(第2のリング)というように、ワクチン接種を行って、免疫緩衝 ゾーンを作り感染拡大を阻止するものである。天然痘根絶作戦では、ワクチン(種痘)接種率が上昇しても局地的な発生が続いていたことから、接種していない人を探すのではなく天然痘患者を探してその地域で種痘を行う方が効果的と考えて、この方式が採用されたのである。

リングワクチン接種は家畜伝染病ではしばしば行われている。たとえば、口蹄疫では発生農場の周囲5キロ以内の健康な動物にワクチンを接種して緩衝地帯を作っている。包囲ワクチン接種とも呼ばれる。

ワクチンは接種に同意した18歳以上の成人に筋肉内注射された。対象になったのは、90の発生群の総計7651名で、即時接種と後日(21日後)接種の2グループにランダムに分けられた。後日接種グループが通常の臨床試験での対照(偽ワクチン接種)に相当する。

今回発表されたのは、2015年4月1日から7月20日までの成績である。それによれば、即時接種グループ(4123名)では少なくとも10日間に患者発生はゼロで、後日接種グループ(3528名)では16名の患者が発生した。この結果は、ワクチンが100%の防御効果を示したことを示している。さらに、発生群レベルで検討すると、ワクチン接種に同意した人、同意しなかった人を合わせて75%の防御効果、妊婦や子供などワクチン接種対象にならなかった人を合わせて76%の防御効果が見られた。その結果、ワクチンが発生群の中でワクチン接種を受けなかった人の感染リスクも減少させることが推測された。

重い副反応が43名で見られ、そのうち1名(発熱、後遺症なく解熱)はワクチンが原因と判断されている。

ギニアでのエボラ発生は、7月26日の週には4例だけになっており、このワクチンがエボラの完全終息に役立つことが期待されている。

文献

A.M. Henao-Restrepo et al.:Efficacy and effectiveness of an rVSV-vectored vaccine expressing Ebola surface glycoprotein: interim results from the Guinea ring vaccination cluster-randomised trial. Lancet, Published online. July 31, 2015.
http://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(15)61117-5.pdf
Editorial: An Ebola vaccine: first results and promising opportunities. Lancet, Published online. July 31, 2015.
http://www.thelancet.com/pb/assets/raw/Lancet/pdfs/S0140673615611175.pdf