人獣共通感染症連続講座 第146回

 

(7/2/03

米国で発生したサル痘(追加と訂正)


 
米国で発生したサル痘  (追加と訂正)

 サル痘患者への対応が遅かったことから、天然痘バイオテロに対する準備態勢が問題になっていることについて、英国の科学雑誌New Scientist 6月21日号に関連記事が掲載されていました。その内容を追加します。

 

 最初の報告例はウイスコンシン州の女性で5月11日に2頭のプレイリードッグを購入し、その2日後に1頭が3歳の娘を咬みました。5月20日に娘は医師のもとに連れて行かれ、その際、白っぽい発疹が出ていました。5日後には発熱、発疹の化膿のために入院しました。医師は最初、プレイリードッグに感染が知られているペストと野兎病についての試験を行っています。

 5月27日には母親も同じ症状を示し、さらに4日後には父親も症状を示しています。しかし、誰も6月4日までは保健当局には報告していません。それまでに5月30日には母親の発疹から天然痘ウイルスと同じグループのウイルスが分離されていたのですが。(CDCでは2次感染は確認していないようですので、内容に食い違いがあります。)

 もうひとりの女性(前回、最初の患者と紹介した例)は、新聞記者に対して発熱と化膿した発疹の症状を示して病院に行ったところ、アスピリンを与えられて帰宅したと語っています。

 天然痘ウイルスの拡散モデルを研究しているエール大学エド・カプラン(Ed Kaplan)は、今回の対応の遅れがもしも天然痘ウイルスによるバイオテロ攻撃で起きたと仮定すると、6月7日までにすくなくとも80名から175名に2次感染を広げ、そのうちの何人かは3次感染を起こしていたと推測しています。

 迅速な検出が非常に重要ということで、この記事はしめくくられています。

 

一部訂正

 前書きで、サル痘はウエストナイル熱に続いてアメリカ大陸に侵入した新たなウイルス感染と書きましたが、SARSも侵入していますので、3つ目の新しいウイルス感染ということになります。


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