人獣共通感染症連続講座 第112回 米国でBSE牛が見つかった場合の緊急対策シナリオ

 (2/3/01)

フランスに始まったBSE騒動はヨーロッパからアジア地域に広がり、FAOは地球規模での脅威になると警告しています。これに関連してウオールストリートジャーナル(1月29日)に、米国でもしもBSE牛が見つかった場合、どのような緊急対策がとられるかという記事が掲載されました。それによれば、米国政府は米国でのBSE発生の可能性はきわめて乏しいと表明していますが、それでも仮に発生した場合の詳細な緊急計画を作成したということで、その要点が簡単に紹介されています。それをさらに私なりに整理してみます。

もし、BSE感染牛が出たとすると、農夫、獣医師、または政府検査員が通常の治療に反応しない奇妙な行動で気が付くことになるだろう。牛は運動失調、極度に神経質または攻撃的になり、食欲はあるのに体重減少が見いだされ、殺処分される。組織についての検査の結果、BSEの疑いがある場合、サンプルはアイオワ州エイムスにある農務省の研究所に送られ、そこで、病理検査が行われる。海綿状の空胞が見つかれば、異常プリオン蛋白染色が行われ、またウエスタン・ブロットによる異常プリオン蛋白の検出が行われる。これらの結果を研究チームで検討し、BSEがまだ疑われる場合、病理学者が英国中央獣医学研究所Central Veterinary Laboratory(ロンドン郊外)にサンプルを持参して試験を依頼することになる。これには1?3日かかる。一方、農務省は動植物健康監視局内に対策室を設置する。

問題の牛が見いだされた州では牛の家系を追跡し、残りの牛を隔離する。

英国での検査で最終結論が得られた段階で、はじめて一般に公表される。これは、農務省がサンプルを採取してから22日後になるだろう。同時に、地域の動物検査員、ほかの州の機関、外国大使館、企業、消費者代表などを集めた会議が開催される。また、パリにある国際獣疫事務局OIEに報告される。

食品医薬品局FDAは動物の飼料の由来を追跡して、ほかの動物に与えられていないかを調べる。FDAはBSEのために特別の計画を立ててはおらず、ほかの食品汚染の場合にしたがった手順をとることになる。もしもBSE牛が食品ルートに入っていることが判明した場合には、食肉と、副産物(組織、脂肪など)のルートを調べる。また、プレスレリーズ、実態報告などをメディアに対して行う。

このシナリオの一部分はバーモント州でスクレイピーに感染したヒツジが見いだされた時に、感染したヒツジの2つの群全体を殺処分するかどうか議論した際に実施されたとのことです。